いつもブログを読んでいただきありがとうございます。院長の柳です。
今回の記事は積極的に長時間の仕事をしている方、リーダー的立場にいる方、自分の時間を持ててない方には興味深いと思います。
これまで筋膜、内臓と二つの視点から肩こり・腰痛を考えてきました。今回のストレスによるものは実は非常に多いのではないかと思います。ストレスとひとことにいっても様々なものがありますが主に『感情』によるものを指します。1980年にニューヨーク医科大学のジョン・E・サーノ博士が提唱したTMS理論というものがあります。TMSというのは<緊張性筋膜症候群>といい主に肩と腰にの痛みが生じるものです。最近テレビなどでも言われることが多くなった『痛みは脳で感じている』ということを耳にした方も多いのではないでしょうか?サーノ博士がこの症状の原因にあげたものがなんと『怒り』だったんですね。
行き場のない怒り、苦悩。そう私は私の心を刻んだ。腰と肩に、、、、私も開業時に生まれて初めて腰痛に悩まされました。
『怒り』が肩・腰の痛みの原因となると聞くと『なるほど!』となる方と、『はあ?』となる方とおられると思います。僕は正直、医療従事者の端くれとして思いっきり後者の『はあ?』派なのでサーノ博士の話はそこそこに、誠に勝手ながら掘り下げていきます。先ほど痛みは脳で感じていると言葉が出てきましたが全くその通りです。その通りですが脳だけで痛みが生じているわけではないと言えます。実は脳は痛みを拡大解釈しているというニュアンスが僕は正しいと思っています。どういうことかというと1の痛みを10に感じてしまうということです。(これらを痛覚過敏=アロディニア、似たようなものに異痛症というものもあります)
なぜそんなことが起こるのか?これには痛みのメカニズムが関わっています。簡単に説明します。身体になんらかの損傷があった時に炎症物質や疼痛物質と呼ばれるものが体内に生じます。神経がこれらの物質をキャッチした際に痛みを感じるわけです。痛みを感じると自律神経の一種、交感神経が興奮します。するとその部分の血管が収縮し、血流が悪くなります。本来ならここから徐々に回復に転じていくのですが、ここで心理面やさまざまな要因により正常なシステムに異常が生じることがあります。
そうなるといつまで経っても痛みによる神経系の興奮がおさまらず、血管が収縮しっぱなし、結果的に血流が悪い状態が続くと疼痛物質が流されず、酸素も欠乏します。特に神経は酸素欠乏に弱いのです。結果、疼痛物質がたまる→痛みを感じる→交感神経興奮→血流悪化→神経異常、、、この繰り返しが起こります。(実際に神経構造に変化が起こっていきます)
この負のサイクルは外傷によるかそうでないかは関係なく、交感神経や脳の知覚領域、認知領域に異常な興奮があれば十分起こり得るということです。恐怖や怒りは交感神経を興奮させます。つまり感情や認識によって脳のある部位(デフォルトモードネットワークと呼ばれる部位や辺縁系など)の働きに問題が出てしまうと痛みの拡大解釈が起こってしまうということです。この結果、痛みが慢性化してしまいます。
ではこれらの痛みに対し有効なアプローチは何かというとそれは認知行動療法と呼ばれるものです。簡単にいうと考え方・解釈の仕方を修正していくことです。読書や、良い出来事のみを日記につける、瞑想などがあります。良い情報を、自分自身を<知る>ことが重要と言えます。私たちが事細かく説明をするのは今の状況を知ってもらうことが回復に重要だからです。
そしてもう一つ、自律神経の調整です。古くから医学的手技療法の中には神経異常、機能異常を修正するために脳の機能を正常化する身体への<トーンに基づく>アプローチ方法が多々あります。同時に必要な栄養を補うこと。この精神・構造・化学の三要素にしっかりアプローチすることが一番の近道と思われます。当院にも、このような症状の患者さんの来院や紹介が増えてきました。痛みを考える上でも心理、脳など診るべきものは多岐にわたる。非常に奥深いですね。